…ブランドは広告ではなく、利益を生み出す経営資産
「ブランド」という言葉を聞くと、多くの方は高級ブランドやテレビCM、大企業のロゴマークを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、それはブランドの一面に過ぎません。本来は中小企業経営者こそブランドについて真剣に考えるべきだと思っています。なぜなら、これからの時代に会社の利益を左右する最大の要素の一つがブランドだからです。
日本は長いデフレ時代を終え、本格的なインフレ時代へと入りました。人件費、原材料費、物流費、エネルギー価格など、あらゆるコストが上昇しています。このような環境では、価格を据え置いたまま経営を続けることは困難です。一方で、値上げをすれば顧客が離れてしまうのではないかという不安を抱える経営者も少なくありません。しかし、ここで考えていただきたいことがあります。同じように価格が上がっても、お客様が離れない会社があります。一方で、少し価格を上げただけで受注が減ってしまう会社もあります。この違いは何でしょうか。
その答えこそが「ブランド」です。
投資家のウォーレン・バフェットは、優れた企業の条件として「価格決定力(Pricing Power)」を重視しています。価格を引き上げても顧客から支持され続ける企業は、長期的に高い利益を生み出すことができるという考え方です。
では、なぜそのような価格決定力が生まれるのでしょうか。それは、お客様が価格ではなく、その会社の価値を評価しているからです。
ブランド戦略の第一人者であるデービッド・アーカーは、ブランドを企業の重要な無形資産として位置付けました。ブランドとはロゴやデザインではなく、「顧客の心の中に形成された信頼や評価の蓄積」であり、それが企業に超過利益をもたらす源泉になると述べています。つまりブランドとは、価格以上の価値をお客様に感じていただく力なのです。
例えば、同じような商品を扱っていても、「あの会社なら安心だ」「困ったときには必ず対応してくれる」「担当者の提案力が素晴らしい」と思われている会社は、価格だけで比較されません。逆に、違いが伝わらない会社は、「どこで買っても同じ」と判断され、最後は価格だけが比較対象になります。
価格競争に巻き込まれる会社と、価値で選ばれる会社の違いは、ここにあります。経営学者ピーター・ドラッカーは、「企業の目的は顧客の創造である」と述べました。この言葉を「ブランド」という視点で捉えると、その意味がより明確になると思います。
顧客を創るとは、一度商品を購入していただくことではありません。何度も選んでいただき、他社ではなく自社を第一に思い浮かべていただける存在になることです。その積み重ねがブランドであり、企業の競争力そのものなのです。中小企業の経営者の中には、「うちは広告宣伝費が少ないからブランドは難しい」と考える方もいらっしゃいます。しかし、それは大きな誤解です。
・ブランドは広告でつくるものではありません。
・約束を守ること。
・品質を維持すること。
・迅速に対応すること。
・社員が誠実であること。
・困ったときに期待以上の提案をすること。
こうした日々の積み重ねこそがブランドです。
実際、日本には広告費をほとんどかけずに強いブランドを築いている中小企業が数多く存在します。高度な技術力で世界市場から選ばれる町工場、地域で圧倒的な信頼を集める工務店、特定分野に特化して全国から依頼が集まる専門企業など、その共通点は「価格ではなく価値で選ばれている」ということです。
ブランドが確立されると、経営には大きな変化が生まれます。価格競争から抜け出せるため、利益率が向上します。利益が増えれば、社員への賃上げや教育投資、設備投資、新たな挑戦への資金を確保できます。その結果、さらに企業の価値が高まり、ブランドが強くなるという好循環が生まれます。つまりブランドとは、単に売上を伸ばすためのマーケティング手法ではありません。利益を生み続ける経営の仕組みであり、会社の未来を支える無形資産なのです。
これからの中小企業経営者に必要なのは、「どうすればもっと売れるか」を考える前に、「なぜお客様は当社を選んでくださるのか」を深く考えることだと思います。その答えを磨き続けることがブランドを育て、ブランドが価格決定力を生み、価格決定力が利益を生み出します。
インフレ時代において、ブランドは「あればよいもの」ではありません。持続的な成長を実現するための経営資産であり、企業価値そのものです。
次回は、そのブランドをどのように育てればよいのかを考えます。ブランドは偶然生まれるものではありません。理念、専門性、品質、情報発信、そして社員一人ひとりの行動を一貫させることで育まれるものです。中小企業だからこそ実践できるブランド経営について、具体的に掘り下げていきます。
――――――――――――――――――――――――――――
※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、クライアントに『お金の心配をできるだけしない経営を行ってもらう』ための新しい機能(=金融機関対応を含む財務の機能)を持つことを宣言いたします。我々は、『税理士』ではなく、『新・税理士』です。遠慮なくご相談ください。
○音声・パワーポイントレジュメ付の誌上無料セミナー(20分)をご視聴ください。
【創業~中小零細企業経営者が押さえておくべき銀行取引の基本ルール10!と3つの事例!】
…借り手の論理ではなく貸し手の論理で!雨傘理論ではなく日傘理論で!
https://youtu.be/74QoKmoljcc