…事業立地を見直すことが、これからの企業の成長を決める
前回のコラムでは、日本経済がデフレ経済からインフレを伴う成長経済へ移行しつつあり、企業にはビジネスモデルの抜本的な見直しが求められていることをお伝えしました。その中で私が最もお伝えしたかったのは、「利益が出ない事業モデルは見直さなければならない」ということです。
今回は、その続きとして経営者の皆様に一つの問いを投げかけたいと思います。
●私たちは、本当に利益が出る仕事を選べているでしょうか。
そして、もう一つ重要な問いがあります。
●私たちは、本当に利益が出る市場で戦っているでしょうか。
この問いに答えるために欠かせないのが、「事業立地」という考え方です。事業立地というと、工場や店舗の所在地を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、経営における事業立地とは、もっと広い意味を持っています。それは、「どの市場で、どの顧客に、どのような価値を提供して利益を生み出すのか」という、自社の戦う場所を決めることです。どれほど優れた商品や技術を持っていても、価格だけで比較される市場に身を置いていれば、利益は残りません。反対に、同じ技術やサービスでも、その価値を正当に評価してくれる市場へ事業立地を変えることができれば、利益率は大きく改善します。つまり、企業の利益は「何を売るか」だけではなく、「どこで戦うか」によって決まるのです。
振り返れば、30年以上続いたデフレ時代は、「仕事を選べない時代」でした。価格競争が激化し、「仕事があるだけありがたい」「受注を断ってはいけない」「売上を落としてはいけない」という考え方が、多くの企業に浸透しました。その結果、利益率の低い仕事でも引き受け、利益はコスト削減で補うという経営が一般化しました。
しかし、その前提は大きく変わりました。
人手不足が常態化し、物価も賃金も上昇するこれからの時代は、人も時間も設備も貴重な経営資源です。限られた経営資源を利益の出ない仕事に使い続けることは、大きな機会損失になります。これからの経営は、「仕事を集める経営」ではなく、「利益を生み出す仕事を選ぶ経営」へ転換しなければなりません。
私は経営改善のご相談を受ける際、「一番売れている商品は何ですか」とはあまりお聞きしません。代わりに、「御社は、どこで利益を稼ぐ会社ですか」とお尋ねします。すると、多くの経営者が考え込みます。売上は把握していても、「利益を生み出す市場」が明確になっていない企業が少なくないからです。
- 価格競争の激しい市場で疲弊していないか。
- 利益率の低い顧客に依存していないか。
- 「昔からのお付き合い」という理由だけで採算の合わない仕事を続けていないか。
こうした問いに向き合うことが、事業立地を見直す第一歩になります。もちろん、長年のお客様との信頼関係は大切です。しかし、利益を生まない仕事を続けることで、利益を生む仕事へ投資する時間や人材まで失ってしまっては、本末転倒です。経営とは、「何をやるか」を決めること以上に、「何をやめるか」を決断することでもあります。
利益率の低い事業から撤退する。価格競争の激しい市場から距離を置く。自社の強みが生きる分野へ経営資源を集中する。そうした決断が、これからの企業には求められます。中小企業の最大の強みは、大企業と同じ土俵で価格競争をすることではありません。専門性、技術力、提案力、対応力、スピードなど、自社ならではの価値を必要としてくれる市場を見つけることです。価格で選ばれる会社ではなく、価値で選ばれる会社になる。そのためには、商品を変える前に、「戦う市場」を見直すことが重要です。
日本経済はいま、大きなパラダイムシフトの中にあります。だからこそ、経営者に求められるのは、「どうすればもっと仕事が増えるか」ではなく、「どこで戦えば利益を生み続けられるか」を考えることです。
ぜひ、自社に問いかけてみてください。
◎私たちは、本当に利益が出る仕事を選べているだろうか。
◎私たちは、本当に価値を認めてくれる市場で戦っているだろうか。
◎そして、これからの10年を見据えたとき、自社の事業立地は本当に最適なのだろうか。
経営環境が大きく変わる今だからこそ、事業立地を見直すことは、単なる経営改善ではありません。企業の未来をつくるための「経営戦略」そのものなのです。
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