…外部環境の変化は、売上より先に原価と運転資金から効いてきます。
足元でイラン情勢を受けた不透明感が強まり、物流とエネルギーを中心に経済環境が揺れています。ホルムズ海峡の航行制限に関する報道もあり、エネルギー供給と輸送に影響が出やすい局面です。
このような局面で社長が最初に意識したいのは、売上の増減より、資金繰りに影響が出る項目、原材料価格の上昇、仕入条件の変更、運賃や納期のブレが先に出る点です。原油価格が大きく動く場面では、仕入単価と物流費が連動しやすくなります。
資金繰り悪化の初期サインとして見落とされやすいのは、次の三点です。
一つ目は、粗利の目減りです。
値上がりが先行し、販売価格への転嫁が遅れると、売上が維持できても粗利率が下がります。粗利率の低下は、数か月遅れてキャッシュポジションを削ります。
キャッシュポジションは最低でも月商一か月分以上という基準を置いている場合、粗利率の低下は早い段階で把握したい変化です。
二つ目は、在庫と買掛金の動きです。
納期不安が出ると、早めの仕入や買い増しが起きやすくなります。
在庫が増えると現金は社内で止まります。買掛金が増えると当面のキャッシュは残りますが、支払いが後ろに積み上がっている状態でもあります。在庫と買掛金の同時増加は、資金繰りの谷が後ろで深くなる典型的なパターンです。
三つ目は、回収条件の悪化です。
取引先が資金繰りを守ろうとすると、支払サイトが伸びることがあります。
売掛金の増え方が売上の伸びを上回る形が出た場合、回収遅れが混ざっている可能性が高まります。入金予定と入金実績のズレが増える段階は、資金繰り悪化の初期として扱うべき局面です。
この局面での対策は、順番が重要です。
最初に行うのは、影響を数字に落とすことです。
来月からの仕入単価の上昇幅、物流費の増加分、そして販売価格への転嫁時期の見通しを整理します。月次の粗利率と資金繰り表に反映すると、キャッシュの谷が見えるようになります。
次に、運転資金の守り方を決めます。
キャッシュポジション最低月商一か月分以上という基準を維持するために、在庫をどこまで持つか、買い増しはどの条件なら許容するかを社内で先に決めます。あわせて、回収条件の見直しも検討します。新規取引の前受、条件変更時の中間金設定、請求運用の前倒しなど、回収を早める選択肢を揃えます。
最後に、ファイナンスを前提に設計します。
外部環境の変化で運転資金が膨らむ局面では、借入は後手の選択肢ではなく、資金繰りを守るための設計です。資金使途に応じて借りる方針を徹底すると、運転資金の枠を温存できます。
設備が発生した場合は設備資金として都度借りる、運転資金が必要な場合は運転資金として早めに相談する、この整理がある会社は、環境変化があっても資金繰りが崩れにくくなります。
外部環境はコントロールできません。
ただし、資金繰りの初期サインを拾い、数字に落とし、ファイナンスまで含めて手を打つことはできます。六月は、資金繰り悪化の兆候を早期に捉え、先に動ける状態を作る月にしていきましょう。
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