…「旧来の日本型雇用システムからの転換」と「好きなことに夢中になれる教育への転換」
…前回号のつづきです。
未来人材ビジョン(経済産業省、令和4年5月)について、まとめの章【5.結語】を引用して紹介いたします。
『デジタル化や脱炭素化といったメガトレンドは、必要とされる能力やスキルを変え、職種や産業の労働需要を大きく増減させる可能性がある。こうした中、未来を支える人材を育成・確保するには、雇用・労働から教育まで、社会システム全体の見直しが必要である。
これから向かうべき2つの方向性を示したい。
◆1.「旧来の日本型雇用システムからの転換」
◆2.「好きなことに夢中になれる教育への転換」
「旧来の日本型雇用システムからの転換」とは、人的資本経営を推進することで、働き手と組織の関係を、閉鎖的な関係から、「選び、選ばれる」関係へと、変化させていくことである。多様で複線化された採用の「入口」を増やしていくことでもある。これらを通じて、多様な人材がそれぞれの持ち場で活躍でき、失敗してもまたやり直せる社会へと、変化していく。
「好きなことに夢中になれる教育への転換」とは、一律・一斉で画一的な知識を詰め込むという考えを改め、具体的なアクションを起こすことである。一人ひとりの認知特性・興味関心・家庭環境の多様性を前提に、時間・空間・教材・コーチの組み合わせの自由度を高める方向に転換し、子どもたちが好きなことに繰り返し挑戦したくなる機会を増やしていく。
これらの方向性へと向かうための具体策を、以下に示したい。
◆1.旧来の日本型雇用システムからの転換
(1)人を大切にする企業経営へ
- 具体策1:人的資本経営に取り組む企業を一同に集め、互いを高め合いながら、変化を加速させる「場」を創設するべきである。
- 具体策2:インターンシップの適正化を図る一方で、学生の就業観を早期に培い、目的意識を持った学業の修得、有為な若者の能力発揮にも資するよう、インターンシップを積極的に活用する仕組みに変えるなど、新卒一括採用だけでなく通年採用も並列される社会へ変革するべきである。
(2)労働移動が円滑に行われる社会に
- 具体策1:“ジョブ型雇用”の導入を検討する企業に向けたガイドラインを作成するべきである。
- 具体策2:退職所得課税をはじめとする税制・社会保障制度については、多様な働き方やキャリアを踏まえた中立的な制度へ見直すべきである。
- 具体策3:兼業・副業は、社内兼業も含めて、政府としてより一層推進すべきである。
- 具体策4:働き手の学びへの意欲とキャリア自律意識を高めるための取組として、「学び直し成果を活用したキャリアアップ」を促進する仕組みを創設するべきである。
- 具体策5:スタートアップと大企業の間の人材の行き来を、政府としても支援すべきである。
- 具体策6:地域における人材の活躍に向けて、地域の産学官による人材育成・確保のための機能を強化すべきである。
- 具体策7:未来に向けた労働時間制度のあり方について検討すべきである。
◆2.好きなことに夢中になれる教育への転換
- 具体策1:教育課程編成の一層の弾力化や、多様な人材・社会人が学校教育に参画できる仕組みの整備など、時間・空間・教材・コーチの組み合わせの自由度を高める教育システムの改革に向けて更に議論を深めるべきである。
- 具体策2:高校においては、全日制や通信制を問わず、必要に応じて対面とデジタルを組み合わせることができるように転換すべきである。
- 具体策3:公教育の外で才能育成・異能発掘を行おうとする民間プログラムの全国ネットワークを創設すべきである。
- 具体策4:「知識」の獲得に関する企業の研修教材や大学講義資料等は、デジタルプラットフォーム上で解放を進め、誰でもアクセスできる形で体系化していくべきである。これにより、教員の方々のリソースを、「探究力」の鍛錬に集中させることができる。
- 具体策5:大学・高専等における企業による共同講座の設置や、自社の人材育成に資するためのコース・学科等の設置を促進すべきである。
前半で示した雇用推計の結果が、それぞれの産業や職種において、組織内の雇用制度や業界の人材育成の在り方に関する議論に一石を投じることになれば、幸いである。』(引用)
と締めくくられています。
●未来人材ビジョン!全文
https://onl.bz/bkZQrRM
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