…社員にとって会社は人生のほんの一部に過ぎない!
中小企業において、社員の離職が相次ぐ会社には共通した特徴があります。その要因は必ずしも待遇の悪さや業務の厳しさに限らず、「経営者の姿勢」や「社員との心理的距離感」に起因しているケースが少なくありません。
とりわけ、会社に強い思い入れを持つオーナー経営者ほど、社員にも同じ温度感での忠誠心や情熱を求めがちです。しかし、それが逆に社員の心を離れさせる結果につながることも多いのです。
まず理解すべきは、社員と経営者の立場の違いです。
- 経営者にとって会社は「人生の集大成」や「夢の結晶」
- 社員にとっては「生活の手段」「収入源」であり、「家族を守るための場」
この前提を無視して、「もっと主体的に動いてほしい」「会社の理念に共感してほしい」と期待してしまうと、その思いは社員には“過剰な要求”として伝わってしまいます。
社員が離れていく会社では、こうした“期待の押し付け”が日常的に見られます。
- 「なんで自分で考えないんだ?」
- 「もっと熱意を持って働いてほしい」
- 「会社のために働くのは当然だ」
こうした発言が頻繁に飛び交う職場では、社員は常にプレッシャーを感じ、やがて心が疲弊してしまいます。自分の役割を超える働き方を求められる環境では、安心して働き続けることは困難です。
また、離職率の高い会社には、次のような共通点もあります。
- 努力や成果が正当に評価されない
- 感情的なマネジメントが横行している
- 評価基準やルールが曖昧で不透明
- 人間関係に安心感がなく、心理的に不安定な職場環境
逆に、社員が定着しやすい会社では、経営者のスタンスが次のように整理されています。
- 「社員に過度な期待をしない」
- 「生活背景や価値観に配慮する」
- 「まずは業務をきちんとこなしてもらうことを基本とする」
- 「自主性は前提ではなく、育まれるものと捉える」
また、やりがいを感じられる職場とは、以下のような条件が整っています。
- 明確なキャリアの見通しがある
- 努力がきちんと評価される制度がある
- 心理的に安心できる職場環境がある
社員の離職を防ぐ第一歩は、「社員の人生の中に会社がある」という現実を受け入れることです。社員は会社にすべてを賭けているわけではありません。だからこそ、「働きやすさ」「評価の納得感」「将来の見通し」のある環境を提供することが、経営者に求められるのです。
社員を“経営者の分身”として扱おうとするのではなく、一人ひとりの価値観や生活に寄り添いながら、その人が持つ力を引き出す環境を整えること。それが、離職の少ない、強く安定した組織をつくる基本となります。
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