【実践コラム】資金繰り表とキャッシュフロー計算書

…資金繰り表でキャッシュフロー計算書を補完できます。

銀行は決算書を基に融資審査を行います。しかし、決算書で示される「利益」は実物ではありませんので、利益の存在を確かめる術はありません。銀行は、提出された決算書が正しいか否かという疑念に常に悩まされています。

近年は、存在の確認が難しい利益より、現物で確認できるキャッシュを重視する銀行が増えています。融資の対象として、利益を出せる企業よりもキャッシュを稼げる企業の方が安全であり、また、実物であるキャッシュの動きは決して偽れないためです。

銀行は2期分の決算書からキャッシュフロー計算書を作成します。キャッシュフロー計算書は、キャッシュが増えた(減った)要因を明らかにしますので、銀行にとってはキャッシュの増減に影響しない架空売上に騙されなくて済みます。

しかし、キャッシュフロー計算書に基づく企業評価は、成長企業にとっては不利になる場合もあります。売掛サイトが買掛サイトよりも長い企業が売上を伸ばすと、利益は上がる一方でキャッシュが不足します。当然キャッシュフロー計算書においても、営業キャッシュフローがマイナスとなりますので、キャッシュを稼ぐ力が弱いと判定される恐れがあります。

この誤解を解くためには、「月次資金繰表」が役に立ちます。キャッシュフロー計算書は試合結果の報告のようなもので、仮に野球の試合だとすれば、勝敗は分かりますが、何回にどのようにして点を入れたかというプロセスまでは分かりません。よって、月次資金繰表を作成してキャッシュフロー計算書を補完する必要があります。

キャッシュフロー計算書上で営業キャッシュフローがマイナスになっていても、資金繰表で期首から徐々に売掛金の回収実績が増加していることが分かれば、正常な増加運転資金だと容易に判断出来ます。

資金繰り実績表の作成は、日々の会計データが必要ですので銀行側が作成することは出来ません。企業側が作成して提出する必要があります。また、過去の資金繰り実績だけでなく、未来の資金繰り計画もあわせて提出すれば、今後必要となる運転資金の根拠も示すことが出来ます。たかが資金繰り表ですが、成長企業にとっては大変重要な資料になります。

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